7    簡素化

さまざまな方法でプレイヤーを補助する以外にも、ゲーム体験を簡素化するというオプションを与えられる場合もあります。特定のアクションを自動的に実行させて、ゲームプレイに必要な入力の量を減らすという機能は、複数の入力操作が難しいと感じるプレイヤーにとって便利です。

視聴時間: 15 分
ゲームプレイ: PEGI 3 - 18
字幕を表示する

7    簡素化

この動画では、5つのモジュールを通し、ゲームのアクセシビリティを改善するための方法をデベロッパーに提案・解説します。

7.1    簡素化について

さまざまな方法でプレイヤーをアシストするほか、ゲーム体験を簡素化するための機能や、ゲームで必要とされる入力数を減らす機能の導入を検討しましょう。

ゲームの特定の箇所を簡素化することにより、全体的な入力数を減らしたり、特定のアクションを自動化することで、プレイヤーが入力操作をしなくても自動的に実行されるように設定することができます。

プレイヤーを補助する方法を決定する場合と同様に、ゲームを簡素化する方法を選択するプロセスもゲームの種類によって大きく異なります。全体的なエクスペリエンスを簡素化するためにデベロッパーが提供できる機能をここでは紹介します。


7.2    代替となるアクション

アクションを実行する操作の代替案をプレイヤーに提供します。

ゲームの中には、特定の入力が必要なアクションやプレイヤーにとって難易度の高い入力操作が含まれる場合があります。これらのアクションを実行するための代替案を提供することでゲームを簡素化できるため、より多くのプレイヤーがゲームにアクセスできます。

ポイント・アンド・クリック式などカーソル操作を含むゲームの場合はボタンやキー入力でメニューやインベントリを開くなど、特定のアクションに対し別の種類の入力が適用されることがあります。画面上のグラフィック要素をカーソルで選択することで、これらのアクションを実行できるような構成にすることも検討しましょう。これにより、特定の入力を使わずにプレイすることが可能になります。

『GNOG』の PC 版で「マウスアクセシビリティ」モードを有効にすると、パズルを回す、メニューを開く、などのアクションをインターフェースの要素を選択して実行できるようになるため、エスケープキーやマウスの右ボタンを使わずに済みます。

デフォルトでは、カーソルを使用しないゲームでもこの方式でアクションを実行する設定を適用できる可能性があります。

『Nowhere Prophet』でゲームパッドを使う場合は、さまざまな入力による操作を必要とするプレイ方式から、完全にカーソル式の操作方法に変更することが可能です。この設定では、カーソルを動かしグラフィック要素を選択することですべてのアクションを実行できます。

メニューの操作が難しいと感じるプレイヤーも中にはいます。メニュー全体へのアクセスに複数の入力が必要とされる場合に、これは特に顕著です。

メニューへのアクセスに必要な別の入力が特定のページへの素早いアクセスを提供する目的で使われる場合、それらのページに少ない入力数で移動できる代替案を用意することを検討してください。特定のページに移動するための入力をプレイヤー自身が選択できるようにします。手動のアプローチだと時間はかかるかもしれませんが、ゲームに必要な入力の合計数を減らすことができます。

『FIFA』でゲームパッドを使う場合は、バンパーやトリガーを使わずに特定のメニュー操作を行える機能があります。この機能を活用すると、左スティックのみでメニューを操作できます。

アナログ入力での一連の精密操作を必要とするイベントがゲームに含まれる場合もあります。デジタル入力を代わりに採用することで、アクションの実行が簡素化できないか検討しましょう。

『Red Dead Redemption 2』で魚を釣るときは、右スティックを回す操作でリールを巻き上げますが、「長押しでリールを巻く」をオンにするとデジタル入力の長押し操作によりリールを巻くことができます。

同じように、『God of War』でノミで開く扉を開ける場合も、通常はアナログ入力の精密操作が求められます。「ノミで開く扉」を1つのボタンに設定することで、単一のボタンを押すだけで扉を開けることが可能になります。

特定のアクションに対する入力操作の代替案として考えられるもう1つの方法は、他のプレイヤーにローカルかネットワーク経由で操作を任せるやり方です。

『マリオ オデッセイ』や Nintendo Switch の『Tale of Two Sons』などでは、通常は1人でプレイするゲームを2人でプレイすることが可能です。このモードが有効な場合は、各プレイヤーごとに異なるコントローラを使います。

『Arise: A Simple Story』で2人同時プレイモードをオンにすると、キャラクターを操作するすべてのアクションの実行をプレイヤーの1人が行い、2人目のプレイヤーが環境を操作します。通常は、1人のプレイヤーがこれらのアクションを操作します。

つまり、各プレイヤーが実行する必要のあるアクションの合計数が減ることを、これは意味します。ただし、このようなプレイ方法が適さないゲームも中にはあります。


7.3    自動実行のデジタル アクション

特定のデジタルアクションを自動化できるようにします。

特定のアクションの実行に代替案が提供されている場合でも、アクションの数が多すぎて上手くゲームをプレイできないと感じるプレイヤーが中にはいます。こういった場合は、アクションの一部または全体を自動化することにより、プレイヤーに求めるアクション数を減らすことができます。これは、ゲームで求められる入力数の合計が減ることを意味します。

デジタルアクションを自動化する方法は数多くあり、その実装方法は各ゲームのアクションの種類により異なります。

『Mario Kart 8 Deluxe』で「オートアクセル」を有効にすると、ステアリングやアイテムの使用など、別のアクションに入力を使いながらアクセルをかけるのにも入力を使う必要がなくなります。

別のアクションに反応する形で実行されるように、デジタルアクションを自動化する方法もあります。プレイヤーが1つのアクションを実行すると、それに続いて自動的に別のアクションが実行されます。

『Outer Wilds』では、「ジェットパックブーストモード」を「自動」に設定すると、上に向かってジャンプする際に自動ブーストがかかります。これにより、2つの入力を同時操作する必要がなくなります。手動設定だと、ブーストに1つの入力を使い、上にジャンプするのに別の入力を使う必要があります。

デジタルアクションを自動化するもう1つの方法は、ゲーム内の特定のコンテクストにおいてのみアクションが自動化される設定をプレイヤーに提供することです。このようなコンテクストはさまざまな種類があるため、ゲームにより設定の詳細も異なります。

『Minecraft』で「自動ジャンプ」を有効にすると、ブロックに近づいた時にプレイヤーが自動的にジャンプし、手動でジャンプを実行しなくてもブロックに登ることができます。タッチを含む、サポートされている全入力方法で、この設定を利用できます。

同様に『FIFA』で「自動切り替え」を「自動」に設定すると、手動でプレイヤーを切り替える必要がなくなります。ディフェンスのどのタイミングでも、ボールに最も近いプレイヤーに自動で切り替えられます。

『The Last of Us Part II』では、特定のコンテクストにおいて多数のアクションを自動化できます。「移動アシスト」をオンにすると、特定のコンテクストにおいてアクションが自動的に実行されます。例えば、壁に近づいた際に自動的に登ったり、正しいタイミングでロープから飛び降りたり、馬に乗る際に自動的に障害物をよけたりします。

複雑な入力操作を要するアクションがゲームに含まれる場合、それらを上手く実行できるようアクションを自動化することにより、より幅広いプレイヤーによるゲームへのアクセスを可能にします。

『Spider Man』で「QTEの自動化」を有効にすると、素早く実施されるイベントが自動的に実行され、プレイヤーにとって難易度の高い入力操作を回避することが可能になります。これには、素早く実行する必要のあるボタンの連打操作などが含まれます。


7.4    自動実行のアナログ アクション

特定の方法、または最適な形でアナログアクションを自動化できるようにします。

デジタルアクションを自動化できるのと同様に、アナログアクションも自動化が可能です。

ただし、アナログアクションにはさまざまな種類があるため、ゲームに現状で含まれるアクションの内容に基づいて、自動化の最適な方法を判断する必要があります。アナログアクションを実行する特定の方法をプレイヤー自身が設定できるようにしたり、最適な形で実行されるよう設定を行います。

例えば、目的地に到達できるように設定済みの道や決められた道を自動で移動することを可能にします。この設定を有効にすると、道のりから外れないようにプレイヤーの動きが自動的に調整されます。

『Red Dead Redemption 2』では、「シネマティックモード」にすると、マップ上に参照ポイントを置きボタンを長押しすることで、キャラクターが自動的に進み目的地に辿り着くことができます。

『Forza Motorsport 7』では、ステアリングアシストを最大に設定すると、最適な運転ルートから外れないようドライバーのステアリングが補助されます。他の車に反応してルートが変更されることはありませんが、プレイヤーが手動でステアリングをしなくてもレースを完了することが可能です。

同様に、プレイヤーの動きを遅らせるような障害物やエリアを避けるため、道程を変更する機能を導入することも検討しましょう。プレイヤーが何かにぶつかりそうになった時にアナログ入力を素早く操作して衝突を避けるのが難しい場合は、障害物を自動的によけられるようにしましょう。

『Mario Kart 8 Deluxe』で「スマートステアリング」を有効にすると、プレイヤーがサーキットの端に近づいた際や、スピードを遅らせるエリアに近づいた際にスマートステアリングが起動して、サーキットから外れないように軌道が修正されます。

三人称視点ゲームなど、ゲームの種類によっては、ボタンを一度押すだけで自動的にカメラをセンタリングするアクションが含まれており、通常はキャラクターの進行方向に向くように修正されます。これで、一部アナログ入力でカメラを操作できるようになるため、特定の状況においてカメラを操作しやすくなります。

デジタルアクションの場合と同様に、他のアクションに反応するようアナログアクションを自動化することもできます。手動でカメラを修正する代わりに、カメラが自動的に修正されるように設定できます。『God of War』でのキャラクターの攻撃場面が例に挙げられます。

または、キャラクターの進行方向に合うように、継続的にカメラの向きを修正する設定も検討しましょう。

『Spyro Reignited Trilogy』では、「パッシブ」から「アクティブ」にカメラの設定を変更できます。この設定では、カメラの向きが継続的に自動で修正され、Spyroの進行方向と一致するようになります。

三人称ゲームにこのような機能を搭載すると、2つのアナログスティックを同時に使用するのが難しく感じるプレイヤーにとって特に便利でしょう。

『The Last of Us Part II』の「カメラアシスト」機能では、プレイヤーの進行方向に合わせてカメラの方向が調整され、必要に応じて補助機能を単一の軸にのみ適用することができます。

あまり一般的ではありませんが、一人称ゲームでもカメラを自動化することができます。例えば、『Sea of Thieves』には「オートセンターカメラ」機能があり、一定時間を過ぎると自動的にカメラが地平線のビューに戻ります。これにより、プレイヤーが手動でカメラを修正する必要性が最小限にとどめられます。

デジタルアクションを自動化する場合と同様に、アナログアクションを自動化することで生じるメリットの1つは、複雑な入力操作をプレイヤーが回避できる点です。

『Outer Wilds』では「自動運転」機能を有効にすると、旅全体を通して、最適な方向に、最適な速度で惑星へ移動することができるようになります。プレイヤーが目的の惑星にロックオンし自動運転を起動すると、宇宙船の動きの様々な側面が自動的に調節され、惑星に辿り着くことができます。これにより、複雑なアナログ操作を単一入力を一度押す操作に置き換えることが可能です。


7.5    アクションの予測

可能であれば、プレイヤーが実行したいアクションを予測して自動化できるようにしましょう。

ゲームを簡素化する方法としてもう1つ考えられるのは、特定のタイミングでプレイヤーが実行すると思われるアクションを予測することです。

プレイヤーの意図に反してアクションが実行されるのを防ぐ必要があるため、この機能の実装は複雑化する可能性があります。さまざまな要素に基づいて予測が成されなければなりません。

このような予測を行う際は、プレイヤーの現状のコンテクストや、プレイヤーが実行したばかりのアクションを考慮します。

例えば、『FIFA』の「2ボタン」モードでは、入力が押されると、グラウンダーパス、スルーパス、ロブパスのうちのどれをプレイヤーが使うかが自動的に決定されます。さまざまな要素に基づいてこの決定は下されます。アナログスティックがその瞬間に指している方向や、入力長押しの持続時間の両方が影響しますが、他のプレイヤーの現状の位置も同様に考慮されます。「1ボタン」モードでも同じ機能が発動しますが、「アクション」ボタンを押した際にプレイヤーがシュートを意図しているかどうかも考慮されます。

『Devil May Cry』で「自動アシスト」モードを使うと、通常は複数の入力が必要とされる複雑なコンボを単一の入力のみで実行できます。戦闘のコンテクストで入力が押されると、各タイミングでの最適なアクションをゲームが判断し自動的に実行します。

ゲームを簡素化するその他の方法と同様に、この機能がもたらす主なメリットは必要な入力数が減ることです。1つの入力で複数のアクションを実行できるだけでなく、各時点でプレイヤーがどのアクションを実行したいのかが自動的に予測されます。

ゲームに予測機能を実装する場合、機能をどのように発動させ、どのような効果を持たせるかはゲームの種類によって決まります。


「簡素化」について、この動画で解説しました。このトピックの各モジュールの動画や他のトピックの動画は、SpecialEffect DevKit のサイトでご覧いただけます。 URL:specialeffectdevkit.info

モジュール

  1. 7.1    簡素化について
  2. 7.2    代替となるアクション
  3. 7.3    自動実行のデジタル アクション
  4. 7.4    自動実行のアナログ アクション
  5. 7.5    アクションの予測

  1. 戻り先: ゲームプレイ ↵